All roads leads to ABM(すべての道はABMに通ず)

 筆者には、「B to Bマーケティングの活動は、結局のところABM(Account Based Marketing)に行き着く」という思いがあります。このコラムでは、「米国のABMの潮流」および今後日本にもABMブームが到来した時に、「なぜABMに取り組むべきなのか」その5つの理由を紹介します。

— 前段 —

 どのようなビジネスモデルにおいてもその根幹にあるのは、「顧客の成功」「顧客が成し遂げようとしている目的を果たすためのサービスを提供すること」があります。昨今ではカスタマーサクセスともいわれますが、ABM(Account Based Marketing)の広義の意味もそこにあります。

特にABMは、「ICP(Ideal Customer Profile)=理想的な顧客像を定義すること」から始まります。

つまり、「自社にとって理想的な顧客像とは何か」これを始めに定義します。自社で定めたICPに該当する顧客のゴールを理解して中長期に渡りともに歩むことこそが、LTV(Life Time Value)の最大化に繋がります。また、ICPの定義は、既存顧客だけに当てはまるものではなく、これから関係を築きたい新規顧客の開拓についてもターゲティングの条件として活用されます。

では企業は何をすべきか

 「顧客の成功」を前提に、限られた「予算、リソース、サービス」の中で、ROIを最大化していく必要があります。例えば、広告一つをとっても無計画に無駄打ちするのではなく、きちんとICPに届けることが必要です。イベントの案内、名刺の獲得、架電やメールなどのコミュニケーション活動は、「予算、リソース、サービス」を最適化することでコストを削減していかなければなりません。

 例えば、企業分析やSTP(Segmentation, Targeting, Positioning)に基づくマーケティングを行っているはずです。そして、その効果を最大化するためにあらゆる手段を使っているはずです。それはOne of ABMであり、気付かぬ間にABMの方向に手段だけが進んでいるのです。

きっとここまで読むと、「なんだ、そんなことは既にやっているよ」と言うかもしれません。

そうです、既に皆さんのビジネス活動の中で、ABMの一部を実行しているはずです。でも、蓋を開けてみるとそれは単なる方法や手段だけの話しであることが多くまったく戦略がないものばかりです。「ABMの一部を既に実行している≠ABMに取り組んでいる」であり、「ABMの一部を実行している≠ABMを理解している」でもあります。

  全社的なABM戦略という上位レベルから、きちんと現場の活動まで落ちていないため現場はやっているつもりになっています。目先のことばかりで、中長期のICPの発掘や関係作りなどということが全社的に疎かになっているため、マーケティング、セールス、サービス、サポートなど全てが自転車操業になってはいないでしょうか?

 マーケティング先進国の米国では、Marketing Automation(MA)ブーム真っ只中の2015年、Marketo創設者の一人がABMに特化したEngagio社を立ち上げています。創設の理由の一つに、「B to Bにおけるリードビジネス戦略の限界」がありました。B to Bにおいて、リード単位の戦略とそれを管理する手段を導入しても効果が薄かったことから、ABMを戦略に組み込んだマーケティングモデルが必要と考えたのです。

つまり、「One of ABMからの脱却、そしてABM Strategy(ABM 戦略)としての組み込み」です。本国においても、これまでいろいろ試して遠回りをしたけれど、結局のところビジネス戦略からABMに取り組むべきという流れに行き着くであろうと思っています。

それでは、米国のABM事情を紹介します。

米国のABM状況

米国過去5年のGoogle Trendsで「Account Based Marketing」で調査(2018年10月)

米国では主要都市で右肩あがり。日本では2015年ころから「東京都」一都集中で米国の約半分で推移。

 

ITSMAが発表した米国のABM取り組み状況(2018)

ITSMAのレポートに調査対象のB2B企業数が明記されておりませんでしたが、ABMに取り組む流れが来ていることが想像できます。

ABMに取り組む5つの理由

1. ROIの最大化

“84% of marketing organizations have had higher ROI with ABM than traditional tactics.” -ITSMA
ITSMAによると、マーケティング組織の84%が従来の戦略よりもABMで高いROIを得ています。(意訳:B-Story, Inc)

 ご存知の通り、経営層レベルになればなるほどROIにシビアです。ビジネスのターゲティングをきちんと行えれば投資の最適化ができます。当然のことながらROIは高くなります。投資に対する効果を高めていくための戦略と施策へのシフトが求められます。

2. 機会損失の削減

“On average, more than five people sign off on each B2B purchase, according to Gartner, and that figure rises to seven people for companies with 100-500 employees.”
Gartnerによると、B2Bの購買には、平均して5人以上が関わり、その人数は、従業員が100-500人規模の会社では、7人に上っている。(意訳:B-Story, Inc)

 B to Bの購買プロセスに複数人が登場するのは当然のことです。例えば、「イベントに申し込む人」「来場する人」「Webを閲覧する人」「サービスを評価する人」「稟議を書く人」「商談テーブルに出る人」「決裁する人」など、それぞれの役割を果たすために会社に接してきます。

 例えば、お問い合わせしてきた一人にフォーカスして、過去の接触履歴を分析しても何もわからないことがあります。B to Bにおいては、個人の分析やスコアリングを行っても機会損失になるリスクがあるのです。会社や部門などの単位かつ一定期間における接触の頻度などがビジネスにおいて重要なトリガーになります。この傾向は、米国だけでなく日本でも同じです。B to Bという企業間取引は、その名のとおり会社間の関係をきちんと管理する必要があるのです。

3. 論理的なビジネス改革

 勘や属人的にビジネスを展開している企業は、市場のスピード、人口・労働者の減少などの影響を受け、今後ビジネス活動に大きな負担を抱え厳しい状況に陥ることが予測されます。また、かつて流行ったビックデータという「データさえ集めておけばそのうち何かに使えるだろう」という考えも通用しなくなってきています。

 自社ビジネスに必要なデータを定義して、それをどこから取得し、どのように蓄積・活用・メンテナンスしていくか、というデータマネジメントが今まさに求められています。

 例えば、B to Bにおいて、「個人メールアドレスは百害あって一利なし」と言っても過言ではありません。そもそもgmailやyahooメールなどのフリーメールアドレスでフォームから会社情報を登録したとしても、その人が本当にその会社の社員であるのかわかりません。また時間を経て、同一人物が会社のメールアドレスでフォーム登録した場合、同じ人物で二つリードが存在することになります。

 つまり、フリーメールアドレスは、いつかは不要となるデータと言えます。そのようなBADデータが自社の保有するリードの何割を占めているかデータの健康診断が必要です。結果によっては、MAツールの年間使用コストを何割か削減できる可能性を秘めています。

 メールアドレスは一つの例に過ぎませんが、不正確なデータでは、分析や戦略さえも間違った方向に舵を切ってしまう可能性があります。そして自ずと結果にも影響してきます。データマネジメントに取り組むことは、論理的な戦略、ビジネス改革ができるようになり、社内においても同じデータを然るべき人が活用できるようになり、その結果、カスタマーサクセスの実現にも繋がっていきます。

4. 意識・仕組改革

 ABMは、セールスとマーケだけで行う活動ではありません。情報システム部門、製品部門、CS部門なども含む会社全体の戦略である認識が必要です。

 それはなぜかというと「顧客はどこをみているか」というのが解となるでしょう。CSでしょうか?担当営業でしょうか?マーケターでしょうか?製品サービスやスペックでしょうか?

 顧客の視点は点ではなく面、”会社”でみています。社員の意識として、ICPを理解し、その顧客に対し会社としてどうあるべきか、その姿を描き、仕組み化していくことが必要不可欠です。もしつまづいた時は、そのICPの定義、そして会社としてどうあるべきかに戻ることで、会社としての方向性を見失わずに進むことができるでしょう。

5. 将来の糧

 「ICP:理想的な顧客像」に該当する顧客こそがロイヤルカスタマーになっていきます。ABMは会社間のGIVE & TAKEのバランス、継続的な関係の幅と深さを一層増していく活動です。「目先の売上は営業が作りますが将来の売上は誰が作るのか?」ABMの取り組みこそがその解となるでしょう。

会社/製品

株式会社B-Storyは、デジタルマーケティングに取り組む企業を支援します。「実効性」と「実行性」をコンセプトに、戦略戦術ストーリーをデータ「蓄積、計測、可視化」の視点で一緒に作り上げていきます。

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